【宅配】置き配標準化、国交省が検討~実現への期待と課題
こんにちは、ロジネクトです。
2025年6月、「置き配の標準化を国交省が検討している」と報道各社が報じたニュースに注目が集まっています。
置き配標準化が現実のものとなれば、宅配ドライバーにとっては大きな変化となります。実現により期待される効果と、実現のための課題を考えてみます。
1.報道各社の記事
東京新聞の記事(共同通信の配信)によると、概要は次の通りです。
「国土交通省は26日、宅配ボックスや玄関前に荷物を届ける「置き配」を、宅配便の標準サービスとする検討に入った。業界で人手不足が深刻化する中、再配達を減らし、負担削減につなげるのが目的。物流業界関係者も交えた検討会の初会合を同日開いた。秋までに方向性をまとめる。」
また、時事通信の記事次のように報じています。
「現行の標準約款では、受取人以外で荷物を渡せるのは「同居者」と、マンションなどの「管理者」のみ。ここに置き配を追記する案などが検討課題となる」「大手宅配業者の中には、独自に置き配を可能にするルールを設ける動きもあるが、国交省は標準約款に明記することで、各社の取り組みを後押ししたい考えだ。」
2.国交省が開いた検討会
この会合は、国土交通省が主催した第1回「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会」です。
国交省の公表している委員名簿によると、大学教授などの学識経験者、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵政の大手宅配会社、アマゾンジャパン、楽天グループなどのネット通販業界、マンション管理業協会、不動産協会等の配達先関連など、物流に関わる各方面から有識者が出席したことがうかがえます。
なお、翌日となる6月27日の国交相の記者会見においては、「従来からの対面受取りに代えて、これを置き配のみを限定して標準約款に位置付けるという検討を行うものではない」「あくまで対面の受取りに加えて、置き配などの多様な受取方法を受取りの際の選択肢の一つとしてどう位置付けるかという議論をしている」と、全面的な置き配への移行を意図したものではないことを説明。「置き配に係る盗難リスクなどに対する国民の皆さまの様々な声がありますので、これを踏まえながら本年秋頃を目途」として施策を取りまとめていくとの発言がありました。
3.置き配標準化がもし実現したら…期待される効果
もし、置き配が標準約款に盛り込まれるなどして、置き配が禁止されていたものが解放されたら、どのような効果が期待されるでしょうか。
(1)再配達削減
国土交通省が2025年6月に発表した令和7年4月の宅配便再配達率サンプル調査では、再配達率は約8.4%(宅配に関わる大手事業者6社ベース)でした。コロナ禍前の2019年4月調査で16.0%(大手宅配事業者3社)だったものから、コロナ禍を経て10~11%前後で推移しておりましたが、徐々に下がってきております。
しかしながら、国交省が目標掲げる再配達率5~6%の水準にはまだ届いておりません。
大手宅配各社において置き配が広がれば、不在による持ち戻りが減少し、再配達率も減少するという期待があります。
(2)時間短縮や配達個数増加
不在再配達に時間や労力を割かれることが少なれば、ひとりのドライバーが扱う荷物量が同じだった場合は時間短縮になるでしょう。車両燃料の消費も抑えられます。時間が短縮できる分、より多くの荷物を運ぶことができるようになります。委託ドライバーの中には、報酬が配達個数による歩合制になっているドライバーも多いことから、時間短縮または売上拡大が実現できるのであれば、置き配標準化は基本的には歓迎されることになるでしょう。
(3)参入障壁が下がり、ドライバーの人手不足が改善
拘束時間が長い、在宅確認などの対面対応や再配達依頼の電話対応など配達先とのコミュニケーションが苦手などの理由から、宅配案件を敬遠するドライバーも少なからずいます。そうした一部のドライバーにとっては、置き配標準化は負担軽減となり、宅配ドライバーの参入障壁が下がることで、人手不足の改善につながることも一定程度期待できるでしょう。
4.置き配標準化は実現するのか? 現場を取り巻く課題
(1)出荷人の理解が広がるか
現在、ヤマト運輸や佐川急便などにおいては、出荷人からの了承がない限り置き配は認めておらず、対面配達が原則となっています。
対面配達と比べると、置き配は誤配しても気づかない、荷物盗難される等のリスクが高くなるため、送料を負担している出荷人としては、置き配には抵抗があるのも当然でしょう。
ですので、ネット通販で出品をしている事業者をはじめとする出荷人側の賛同がどの程度広がるかが、一つ目のポイントになるでしょう。
例えば、置き配を標準として対面配達を希望する場合は料金上乗せ、という意見もありますが、送料を負担する出荷人にとってコストアップになりますし、価格転嫁した場合は荷受人でもある商品の買い手から支持を得られるかも懸念材料となるでしょう。
(2)荷受人の理解が広がるか
荷物を受け取る荷受人の理解(国民的理解と言い換えてもいいかもしれません)が得られるかもポイントです。
アマゾンやフードデリバリーなどで既に置き配が広がっているため、置き配標準化を望む方も多いとは思いますが、荷物の損傷、盗難のリスクを懸念する声ももちろんありますし、個人情報や荷物の中身が推測できる情報が掛かれた荷札が第三者に見える状態になることへの抵抗感を持つ方もいるでしょう。
置き配を望まない場合は、追加料金を払って対面配達というのも、物価高騰の現状でさらに負担を求めることになります。
(3)一軒家の課題(雨濡れ・盗難と補償)
既に述べた通り、置き配には宅配ボックスなどでない限り、雨濡れや盗難のリスクが付きまといます。配達員が住所を間違えていても、荷受人に確認しないため、誤配に気づかないまま配達完了してしまうこともあり得ます。
ドライバーの資質向上や宅配ボックス普及などの施策に取り組むにせよ、置き配標準化は、こうした事象が一定程度起きることと背中合わせの側面があります。
そうした場合の補償はどのようにするのか。出荷人や荷受人が置き配を了承していた中で、ルール通りに配達してもなお盗難等が起きた場合はだれがどう補償するのか。宅配会社、ネット通販会社、保険会社を含めた議論が必要となるでしょう。少なくともドライバー個人に責任を負わせることがないルール設計が求められます。
(4)マンションの課題(宅配ボックス、オートロックなど)
マンションにも課題があります。ひとつは、現状でも起きていることですが宅配ボックスの取り合いが起きている中で、対面配達が減っていけば、さらにボックスの取り合いが激しさを増していくことです。また、各号室の玄関前に置くという対応もありますが、オートロックマンションの場合、そもそも在宅していないと解錠せず玄関前にもたどり着きません。加えて、都心部に多く見られるタワーマンションでは、防災センターでの出入管理をはじめとする厳重なセキュリティ、限られた台数のエレベーター待ち等による時間的負担など、置き配標準化だけでは解決しない課題が多々あります。
(5)配達ドライバーのリスク、プレッシャー軽減
ここまで挙げた通り、様々な課題やリスクがあります。ぜひとも改善に当たっては、現場の配達員個人に負担や責任を負わせるようなものにしないようにしてもらいたいと願います。例えば、指示通りの場所に配達したのに置き配後に荷物がなくなったと荷受人からクレームが来る。出荷人からは対面配達を指示されたのに荷受人から置き配を希望された、又はその逆で出荷人は置き配で良いと言ったのに荷受人が置き配拒否をする等で板挟みにあう。現状においても、これらの問題が現場ではよくあります。今回の置き配標準化の検討においては、こうした現場のドライバーが抱える悩み、プレッシャーにも耳を傾けていただきたいところです。
(6)一方で、ドライバーの資質低下リスクをどう抑制するか
一方で、置き配標準化が進んだ場合、宅配ドライバーへの参入障壁が下がることで、ドライバーの資質低下、という懸念もあります。特に、対面配達が減って荷受人(顧客)対応が減って、ダイレクトに顧客の声を聞くことが減るため、顧客視点で考えられるドライバーが減り、配達品質が下がっていく恐れがあります。住所確認、荷扱い、接客対応、駐車位置への配慮など。こうした点は、個人事業主ドライバー個人や軽貨物委託会社が襟を正していくことが求められるでしょう。
5.まとめ
置き配標準化の議論は始まったばかりです。とはいえ国交省発表では、今年秋ごろまでに施策と取りまとめる、というのであれば、そんなに長い時間ではありません。宅配ドライバーにとっては、日々の業務に大きな影響を及ぼす事柄ですので、今後の議論の推移を見守っていきたいと思います。
* * *
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